洞(ほら)の仏頭石・地蔵石仏は、春日山遊歩道(北コース)に佇む石仏です。
その存在を知らずに遊歩道を歩いていても気付かずに通り過ぎてしまうかもしれませんが、結構希少な石仏のようです。仏頭石の六角形の石柱の各面に彫られている六観音も見ものです。
「洞の仏頭石」「洞の地蔵石仏」の概要

春日山遊歩道(北コース)の入口から、程ない(約200mくらい)ところあります。「天然記念物春日山原始林」と刻まれた大きい石柱があるあたりの左手の少し小高いところに置かれています。気にしていないと見逃してしまいがちですが、どちらも古くから知られた著名な石仏のようです。
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こけしのようなユニークな形状で立っているのが「洞の仏頭石」です。その左側に見える平たい石のように見える(横たわっているため遊歩道からは、石にしか見えません)のが「洞の地蔵石仏」といわれるものです。両者の間に高さ約50cm程の小型の地蔵石仏2体もあります。


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「洞の仏頭石・洞の地蔵石仏」の画像ギャラリー
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「洞の仏頭石・洞の地蔵石仏」についてもっと知る
洞の仏頭石・洞の地蔵石仏は、どちらも、元々、現在の位置にあったものではないらしく、ともに付近から移されてきたものと推定されています。
勝手な推定ですが、洞という名がついていることから、付近に洞があり、そこに鎮座していたものなのかもしれません。
洞の仏頭石

六角形の石柱の上部に如来仏の頭部(仏頭)があるかなり珍しい石仏のようです。
高さ約1m程度で、六角柱の石幢(せきどう)のようにも見える花崗岩の柱の上部に、仏頭が丸彫りされています。下部は埋まっているように見えますが、触れると倒れそうにも見えますので、近くで拝観する際には、触れないように注意が必要です。

仏頭は、肉髻(にっけい)(頭頂部が一段高く隆起している部分)如来形の丸彫り、螺髪(らほつ)を刻出し、額に白毫(びゃくごう)(眉間の白い巻き毛)があり、首には、頸部三道(けいぶさんどう)といわれる仏様(如来・菩薩・明王)の首に表現される三本の皺(しわ)も刻まれています。阿弥陀如来とされる説もあるようですが、頭部だけでは判断が難しいようです。
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また、六角形の石柱には、それぞれの面の下部に、狛犬(こまいぬ)が線刻され、その上に観音菩薩が半肉の浮彫りで表現されています。
各面には、正面から「十一面観音」「准胝(じゅんてい)観音」「如意輪観音」「聖観音」「千手観音」「馬頭観音」の六観音が彫られている希少な石仏のようです。
六観音は、それぞれ受け持つ世界が決まっており、十一面観音が、「修羅道」、准胝観音が、「人道」、如意輪観音が、「天道」、聖観音が、「地獄道」、千手観音が、「餓鬼道」、馬頭観音が、「畜生道」を意味するようで、六道輪廻(ろくどうりんね)の衆生を救うといわれるもののようです。
正面の十一面観音の右側に「□仙権大僧都覚遍木食」、左側に「永正十七年(1520年)庚辰二月日」、また、准胝観音の右側下に「円空上人」銘の陰刻がある(確認は難しいです)ようで、この時代のものと推定されています。

「六道輪廻」と、この仏頭石の希少性についてちょっとだけ解説してみます
人間は、その生存中の行いの罪過に応じて必ずおもむくとされる六つの世界があり、この六界の間を苦患(くげん)の迷いの生涯を続けるという思想を「六道輪廻」というようです。
この六道輪廻から、阿弥陀如来が、常に説法している安楽な世界である極楽浄土に救われるという信仰が十世紀から十一世紀初頭にかけて貴族社会を中心に生まれ、六観音を六道の各界に配する六観音信仰が広まったようです。
その後は、地蔵に移行していることから、このような六角形に如来と六観音を配したものは希少なもののようです。

胸元に当たる場所には、溝が彫られており、何かを載せるための造作とも思われますが、何のためのものであるかは分かっていません。
洞の地蔵石仏

遊歩道からは、平たい岩のように見えるだけですが、斜面を登り、近くまで行くと姿を拝むことができます。
鎌倉時代中期の建長6年(1254年)に造立されたという記録が残るもののようです。
現在は、横たわった形で置かれていますが、古い写真では、きちんと立った状態であったようで、いつの時代からか、横たわった状態となったようです。
向かって右の身光背部分に「建長六年(1254年)八月日」、左側の光背の外に「勧人多門丸」と比較的大きい文字で印刻されているといいますが、こちらも私には、よく分かりませんでした。
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洞の仏頭石・地蔵石仏 へのアクセス
春日山遊歩道(北コース)入口までのアクセスです。
入口から、「洞の仏頭石・地蔵石仏」までは、徒歩およそ 5分程度 です。
アクセス
所在地:
奈良県奈良市春日野町 (自由散策)
最寄駅:
近鉄 奈良駅、JR 奈良駅
バス(奈良交通):
春日大社本殿行
「春日大社本殿」下車
徒歩 約8分
市内循環(外回り)
「東大寺大仏殿・春日大社前」下車
徒歩 約15分
駅から徒歩:
約 30分
バス(奈良交通):
春日大社本殿行
「春日大社本殿」下車
徒歩 約8分
市内循環(外回り)
「 東大寺大仏殿・春日大社前 」下車
徒歩 約15分
駅から徒歩:
約 45分
近隣の宿泊施設
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実は、ここも奈良公園といわれるエリアなのです。
奈良の市街地から、春日山方面に歩くと、ほどなく春日山原始林の世界になります。
春日大社、興福寺、東大寺、あるいは、ならまちのほかにも、このような自然に包まれる場所があるのも、奈良の魅力です。
滞在して、奈良を満喫してみてはいかがでしょうか。
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近隣の見どころ
月日磐は、特別な関心がある方は別ですが、春日山遊歩道(北コース)の散策と合わせて見るのがお勧めです。
春日山遊歩道(北コース)は、春日大社本殿前の駐車場付近から、若草山山頂や、鶯の滝に向かうことができる遊歩道です。




さらに遊歩道を進むと、春日山遊歩道(南コース)や滝坂の道へも周遊することができます。




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