日本清酒発祥の地と言われる奈良の正暦寺では、毎年1月に「菩提酛清酒祭」が開催され、奈良の清酒製造研究会の8酒蔵により日本最古の酒母と言われる「菩提酛」の酒母製造が行われます。
当日、利酒会場も設けられ、日本酒ファンや歴史ファンが訪れます。
菩提酛清酒祭の概要

正暦寺は、日本清酒発祥の地といわれます。
室町時代の文献『御酒之日記』で記される清酒の製法をもとに再現されたのが、菩提酛です。
つまり、室町時代には、飲まれていた清酒の味が再現された日本酒ともいえます。
奈良市の天理寄りに位置する正暦寺(日本清酒発祥の地)で、奈良で酒造製造研究会に属する酒造8社によって、菩提酛造りのもととなる「酒母」づくりの行程が公開で行われます。
会場では、このプロセス紹介と合わせて、正暦寺で造らていた僧坊酒「菩提泉(ぼだいせん)」の復元酒や酒造8社によりそれぞれ造られた菩提酛清酒の試飲や、かす汁を味わうことができます。(いずれも有料)
スポンサーリンク
「菩提酛清酒祭」 は、毎年1月(不定日)に開催されます。
※ 酒母づくりは、開催時間より、早く準備されていますが、10:00から2クールに分けて行われますので、1回目を見逃しても、2回目を見ることができます。
・1時間程度で、2回目に移ります。13:00頃に終了します。
・2回目の方が、見学者が少なく見やすいかもしれません。
・清酒の試飲・販売・かす汁の振る舞いを有料で行われます。
・当日は、臨時バスが運行されます。
正暦寺駐車場前の醸造エリアに、酒母の醸造槽と、蒸槽が設置されています。
奥の醸造槽には、事前に仕込まれでできた「そやし水」と「生米(ヒノヒカリ)」が浸かった状態になっています。
その生米を蒸かし、再度、醸造槽に戻すところまでの行程が当日行われます。
(10:00頃に、1回目の蒸米が出来上がるように、事前準備がされています。)
これで、菩提酛の酒造りのもととなる「酒母」が造られます。

酒母づくりには、醸造槽と蒸樽の二つを使ってが行われます。(下で詳しく紹介します。)
8蔵の酒造が共同で行う工程ですが、その姿は、職人というか、仕事人というか、年配の方が、若手を指導する場面も見かけられ、伝統の酒造りに関わる人々の仕事ぶりのような風情も感じます。
スポンサーリンク
菩提酛清酒祭の画像ギャラリー
撮影:2022年(令和4年)1月
Photos by Catharsis 無断転載禁止 ©Catharsis 2021-2024
スポンサーリンク
菩提酛清酒祭で見られる菩提酛造りのプロセス紹介
菩提酛清酒造りのプロセスについては、当日会場(正暦寺)で、資料配布と酒造の一社(油長酒造さん)からの説明をいただけました。
また、正暦寺のHPの記載内容から、菩提酛の酒母づくりは以下のステップで行われます。
「そやし水」造り
(「そやし水」については、後ほど紹介します。)
① 蒸す前の生米を仕込み水に約2日間浸漬させる
② 乳酸発酵が始まり仕込み水が乳酸酸性水(そやし水)となる
酒母の醸成
③ 浸けていた生米を取り出し、これを蒸す
④ そやし水は仕込み容器(甕、木桶、タンク)へ投入する
⑤ 蒸しあがったお米と米麹を容器へ投入する
⑥ およそ10日から2週間ほどかけて酒母が育成される
この内、菩提酛清酒際で見られる行程は、③~⑤の行程です。
これらを、私なりに掘り下げて、当日の画像とともに、菩提酛造りの酒母づくりについて図解してみました。
菩提酛造りは、室町時代の文献に記載されている清酒「菩提泉(ぼだいせん)」の製法をもとに再現されたものですが、現在の技術とわせて再現されています。
室町時代の「菩提泉(ぼだいせん)」は、夏場に(立秋の頃から)酒造りが行われていたようです(その季節の気候が適してたのでしょうか?)。
酒母づくり会場
スポンサーリンク
「そやし水」造り
「そやし水」は、菩提酛造りの特徴となる 酒母(日本酒のもと)づくりのために造られる「乳酸(酸性水)」で、酒母を酸性に保ち、発酵を促進するためのものです。
「そやし水」を使って酒母を造るのは、室町時代の文献に記載される製法です。

ご参考までに、
現在の日本酒造りの主流は、
・「人工的に造った乳酸」を使って造られる酒母「速醸系酒母(そくじょうけいしゅぼ)」と呼ばれる方法と、
・「酒造の蔵内に存在する乳酸菌」を取り込んで造られる酒母(「生酛造り」と呼ばれる製法)がありますが、
「菩提酛造り」では、正暦寺の石清水に自生する乳酸菌をもとに造られる「そやし水」を使って酒母を造ります。
室町時代の文献に記載の製法によると、夏の時期(立秋の頃から)、菩提酛造りが行われたようですが、再現では、図のような方法で、 事前(2日くらい前でしょうか?)に
・仕込水(正暦寺に湧き出る石清水)
・生米(奈良 菩提山町で造られたヒノヒカリ)
・乳酸菌(正暦寺乳酸菌)
が、仕込まれており、菩提酛清酒祭当日は、 すでに醸成槽内に「そやし水」が出来上がった状態となています。
こちらが、当日、抜き出された「そやし水」と取り出された「生米」画像です。


スポンサーリンク
米を蒸す
取り出された、生米は、蒸槽に入れられます。その後、約1時間程度、正暦寺の石清水の蒸気によって蒸されます。
清酒まつりが始まる頃には、1回目の蒸し行程が終了する頃で、辺りには、乳酸を感じる独特の香りが漂います。
蒸槽に被せられる布も、終盤には、かなり膨らみます。
こちらが、それぞれの実際の画像です。


スポンサーリンク
酒母の醸造
蒸した米が、だいたい30~40度まで下がった段階で、「そやし水」の入った醸造槽の戻されます。この時、同時に、米麹が一緒に投入されます。
投入される米麹は、事前に正暦時の水と乳酸菌を使って8蔵が持ち回りで造るようです。
今年、2020年(令和4年)の麹は、「八木酒造さん」によるものとのことです。
そして、再び、そやし水から取り出された、生米を蒸し、醸造槽に戻される工程が繰り返されます。
これが、この行程の実際の画像です。


これから、10日~2週間程度で、日本酒のもととなる「酒母」が醸成されます。
スポンサーリンク
各酒造での菩提酛純米酒づくり
醸成された「酒母」を、各酒造が持ち帰り、それぞれに、この「酒母」を使った菩提酛純米酒づくりが行われます。
同じ「酒母」を使いますが、この後の酒造りの製法(仕込み水や麹や管理手法)によって、菩提酛の特性(甘酸っぱさや淡い乳酸の香り)を持ちながら、甘口から辛口まで、各酒蔵特有の味わいになるようです。

それぞれ造られた今年の菩提酛純米酒は、3月末頃から順次販売されます。
スポンサーリンク
利き酒エリア

酒造りのエリアの直ぐ近くで、利酒のコーナーが設けられています。ここでは、正暦寺の「菩提泉」と酒造8社が造った各菩提酛の販売、試飲(有料)が行われます。
この他、かす汁も売られています。菩提仙川の流れの横での利酒は魅力的でしたが、今回は、車で行ったため、利酒はできず、かす汁のみいただきました。
これも、独特の乳酸臭がほんのり漂う汁で、寒い中の暖かく、かつ、おいしくいただきました。
何となく、粋な感じでも漂う酒造りの行程で、風情を感じる菩提元清酒際でした。
(ご参考)いつでも菩提酛が利き酒できるお店

また、奈良町(ならまち)にある奈良地酒販売店「なら泉 勇斎」では、時期に関わらず、菩提酛の各銘柄を利酒することができます(有料)。
ご興味のある方には、おすすめです。
正暦寺の菩提泉(ぼだいせん)と8蔵で販売される菩提酛
毎年、1月に仕込まれたものは、3月末ごろからの流通となります。
菩提酛の各画像は「楽天にリンク」していますので、購入されてい方は、是非!
菊司醸造

菩提酛 菊司
葛城酒造

菩提酛 百楽門
北岡本店

菩提酛 やたがらす
油長酒造

菩提酛 鷹長
倉本酒造

菩提酛 つげのひむろ
スポンサーリンク
関連記事
菩提酛の特徴については、こちらでも紹介していますので合わせてご覧ください。
正暦寺ついては、こちら
菩提酛の利き酒(有料)なら、こちら

3月下旬に、こちらで、菩提酛新酒の利き酒会も行われます。詳しくは、上の記事をご覧ください。
正暦寺へのアクセス
アクセス
公共交通機関では、少し行きにくい穴場スポットですが、この日は、臨時バスが運行されます。
所在地:
奈良市菩提山町 157
最寄駅:
JR奈良駅、近鉄奈良駅
基本情報
菩提酛清酒祭の開催:
毎年1月(開催日は毎年決定)
10:00~
通常拝観時間:
3月~11月 午前9時~午後5時
12月~ 2月 午前9時~午後4時
拝観料:
菩提酛清酒際は、無料
福寿院客殿は、大人 500円
※ その他周辺散策は、無料
駐車場:
約 80台(無料)
※ 11月初旬~12月初旬は、 500円
記載内容より変更となっている場合がありますので、公式ホームページをご覧ください。
奈良での宿泊施設なら
奈良公園周辺のホテル・宿をお探しなら こちら

JR奈良駅、近鉄奈良駅最寄りのホテルや宿を一覧できるように紹介しています。
社寺参拝や史跡巡りには、奈良公園周辺で宿泊し、ここを拠点に奈良の魅力を満喫してみてはいかがでしょうか。
スポンサーリンク