日本酒の銘柄説明やラベルに「本醸造」「吟醸」「大吟醸」あるいは、「純米」とか「生酒」などと書かれていますが、何となくは、わかってはいても良く分かっていないのではないでしょうか。これ絞って端的にまとめてみたいと思います。
日本酒の区分
お米を削る度合いで吟醸とか、大吟醸になるというくらいをご存知の方はいらっしゃると思います。そもそもこれは、何の区分なのでしょうか。
実は、国税庁が、中央酒類審議会(現:国税審議会)の答申を受け、平成元年11月に「清酒の製法品質表示基準」(国税庁告示第8号)が定め、平成2年4月から適用されている区分なのです。(平成15年10月に、醸造設備や製造技術の進歩等を加味して一部が改正されています。)
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えー、そうなんだ!

では、順番に説明していきます。
まず、大きくは
- 特定銘柄酒
- 普通酒(一般酒)
の二つに分かれると思ってください。
まず、「清酒の製法品質表示基準」では、「特定名称酒」というものが定義され、製法や原料、精米歩合(米をどれだけ削って使うか)など、その要件を満たすのが、「特定名称酒」で、それ以外(製法や原料を問わない)が「普通酒(一般)」ということになります。
そして、「特定名称酒」の要件に応じて「純米酒」「本醸造酒」「吟醸酒」に分かれます。
それ以外に、製法によって「生酒」「原酒」というのもあります。
また、「生酛造り」という言葉もありますので、合わせて紹介していきたいと思います。
要件が組み合わされていれば、「純米生酒」「吟醸原酒」とか「吟醸生原酒」などの特定名称がつくことになります。

次に行く前に、要件に関わるものとして、「精米歩合」という言葉が出ますので説明しておきます。
まず、玄米を削って糠(ぬか)を取り、白いお米にするのが「精米」です。
ご飯として食べる米の場合、精米歩合は一般的に90%程度(米の表層を1割ほど削る)です。
米の表層部には、たんぱく質、脂肪、灰分、ビタミンなどが多く含まれ、これらの成分は、清酒の製造にも必要な成分ですが、一方でこれらが多過ぎると清酒の香りや味を悪くしてしまうため、もっと多く削ることになります。
米を削り落して残す米の量が「精米歩合」ということになります。
例えば、「精米歩合 60%」であれば、玄米の表層部を40%削り取っているということです。
【精米歩合とお酒の味】
精米歩合が低い場合、米の旨味やコクが残る、どっしりとしたお酒が出来上がるといわれています。
精米歩合が高くなるほど、味わいは淡麗で、スッキリとし、華やかな香りも出てくるといわれています。

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それぞれの特定名称酒の特徴

ここまで理解いただいたところで、それぞれの規定と特徴を順番に紹介していきたいと思います。
純米酒
純米酒の要件
米、米麹、水だけで造られた日本酒です。
精米歩合に関する規定はありません。
醸造技術の向上により、精米歩合に要件を設けなくてもおいしい日本酒を造ることができると認められたためです。
純米酒の味わい
米だけで造られているため、米本来の旨味と米の香りが濃厚に楽しめるお酒と言えます。
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本醸造酒(特別本醸造酒)
本醸造酒(特別本醸造酒)の要件
- 精米歩合が、 70%以下
- 米や米麹、および「醸造アルコール」や 水 を 原料に使って造られた日本酒です。
さらに、 - 精米歩合が、60%以下
- 又は、特別な製造方法をとった本醸造酒で色沢(外見上の色や混濁の状態)が特に良好なものを「特別本醸造酒」といいます。
使用する米の重量10%までという規定があります。
本醸造酒に添加されるアルコールは、合成したものではなく、蒸留して造られる純粋なアルコールで、本醸造酒のすっきりとした味わいを出すために必須の原料です。
本醸造酒の味わい
一般的に、すっきりとした辛口となるのが特徴です。
本醸造酒に添加される醸造アルコールそのものが非常に辛口なため、本醸造酒は、辛口な味わいに仕上がります。
米の旨味をじゅうぶんに活かしながら、甘すぎない、後味の爽快感が期待できます。
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吟醸(大吟醸)
いくつか条件はありますが、「吟醸造り」という方法で造られるものです。
吟醸酒・大吟醸酒の要件
- 精米歩合が、60%以下
- 米や米麹、および醸造アルコールや 水 を 原料に使用し、
- 固有の香味と色沢(外見上の色や混濁の状態)が良好で、
- かつ、「吟醸造り」で造られた日本酒です。
更に、 - 精米歩合が、50%以下にしたものが
- 「大吟醸」ということになります。
吟醸酒・大吟醸酒の味わい
他の日本酒(純米酒、本醸造酒、普通酒)と比べると、日本酒の香りが楽しめる「香味」が特徴です。
お酒を注いだ時の香りを重視する「ハナ吟醸」
香りよりも味わい重視の「味吟醸」
と言われるものがあります。
いずれも、豊かな香りと味わいのバランスにこだわって造られるお酒です。
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吟醸造りについて

ちょっと「吟醸造り」について説明します
よく磨いたお米を10度前後の「低温」で「1ヶ月程度の時間をかけて」発酵させる製法です。
低温で発酵することで、香り成分がもろみに閉じ込められますが、香りと味わいを出すためには、慎重に工程管理し、調整する必要があります。
かつ、精米歩合 40%という大吟醸酒であれば、米を 6割程度も磨き上げることになります。こんな手間と時間がかかることから大吟醸酒は高級酒に分類されます。
精米歩合の高い米を使用することで、吟醸酒の特徴であるフルーティな香りや花のような優美な「吟醸香」が生み出されます。
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生酒
生酒の要件
通常の日本酒は、出荷までに2回 加熱処理(これを「火入れ」と言います)がされますが、生酒は、この「火入れ」を行わないお酒です。
生酒は、この加熱処理を行わないお酒です。これは、「冷蔵」「瓶詰」「輸送」の技術が発達したことで、飲むことができるようになったものです。
とは言え、酒の中に残った酵素が働き、酒質は変化し続けるので、保存方法には注意が必要であるとともに、できるだけ早く飲み切った方がいいお酒です。
生酒の味わい
「生酒」は、生酒にしかない甘味と酸味があって瑞々しくフレッシュな味わいが特徴です。
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「火入れ」について

また、新しい言葉が出てきたので説明します
日本酒は生きており、瓶に詰めた後でも変化が続くため、そのままでは飲むころには飲み頃を過ぎてしまうこともあります。それゆえに、品質を変化させる酵素の働きを止めるために、加熱処理が行われますが、これを「火入れ」と言います。
通常は、
「搾った直後のタンクに貯蔵する前」
「瓶や容器に詰め出荷する前」
の 2回 行われます。
この火入れの工程によって、日本酒をもっとも美味しい状態でキープし、保存可能な期間が長くなります。
また、「火入れ」を1回だけ行う「生詰酒」「生貯蔵酒」というものもありますで、次に紹介します。
生詰酒・生貯蔵酒
生詰酒・生貯蔵酒の要件
「生」と呼ばれる日本酒の中に、
「生詰酒(なまづめ)」や「生貯蔵酒」
というものがあります。
これらは、火入れを1回だけ行ったものです。(「火入れ」については、生酒の説明の中に記載)
「生詰酒」は、貯蔵前に火入れを行い、出荷前には火入れを行わないもの
「生貯蔵酒」は、火入れを行わずに貯蔵して、出荷前に火入れを行うもの
です。
「生詰酒」も「生貯蔵酒」も、生酒よりは日持ちはしますが、できるだけ早く飲み切ったほうがいいお酒です。
生詰酒・生貯蔵酒の味わい
「生詰酒」は、2回目の火入れを行わないため、生酒のようなフレッシュな味わいを持ちながら、口当たりはまろやかになるの特徴です。
「生貯蔵酒」は、こちらも生詰酒と同様に、生酒のようなフレッシュな味わいに加え、ふくよかなうまみが特徴です。
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原酒
原酒の要件
日本酒は、一般的に割水(わりみず)と呼ばれる工程があり、貯蔵後に水を加えることにより、アルコール度数が15度前後になるように調整されます。この割水前の日本酒のことを「原酒」と言います。
ラベルに「原酒」と書いていれば加水する前の日本酒ということになります。
原酒の味わい
割水にはアルコール度数を調整するだけではなく、日本酒独特の香りや味わいを調整する役割もあります。
割水することで多くの人にとって飲みやすい状態になる一方、原酒とはやはり異なった風味にもなります。
原酒は、割水をしないため、そのお酒本来の濃厚な香りと味わいが感じられます。
様々な産地や米の種類によって、異なる日本酒の香りや味わいをダイレクトに感じ取れるのが、原酒の魅力でもあります。
また、割水していない分、アルコール度数も19度前後と一般の日本酒より3~4度程度高いため、ガツンとくるパワフルな飲み口も魅力です。
(奈良の人気生原酒です)
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生酛造り・菩提酛造り
生酛造りの要件
日本酒造りでアルコールを生成する過程で、「乳酸」が使われます。
酒蔵に存在する自然の乳酸菌を培養して酒造りをするのが「生酛造り」ということになります。
「山廃仕込み」とか聞いたことあるかと思いますが、これも「生酛造り」の中の製法です。
大変手間も時間もかかる製法のため、現在は、人工的に造られた乳酸が使われことが多く(約9割)となっています。
生酛造りの味わい
酒蔵内に存在する天然の乳酸菌を取り込んですくるため、その酒蔵固有の味となります。
一般的には、濃厚で酸味のある傾向になりやすいようです。
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菩提酛造り(約500年前の製法を復元)
約500年前の室町時代には確立されていた「菩提酛造り」という清酒造り(生酛系)が、復元されており、この製法で造ったお酒もあります。
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詳しくは
これらについては、別の記事で紹介していますので、詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
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まとめ
以上で、それぞれの酒に書かれた「特定名称」により、どのような特徴のお酒なのかをご理解いただけるようになったのではないかと思います。
日本酒は、同じ製法でも、米の産地や種類、品質、あるいは酒蔵ごとの製造・管理の手法や技術の違いよって様々な味わいが生み出されています。
私の住まう奈良県の地酒を中心に、手にしたものを一つ一つ味わい、楽しんで行きたいと思います。
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最後までご覧いただき、ありがとうございました。