室生の深谷川の清流にある龍鎮の滝の傍らに鎮座する龍鎮神社(りゅうちんじんじゃ)。龍神が鎮まるという滝壷は、深く澄んだ水が満ち溢れ、神聖さが身体で感じとれます。
また、龍鎮神社に至る深谷龍鎮渓谷も、神域と感じる空気感に包まれ、一帯がパワースポットと感じられます。
龍鎮神社の概要
龍鎮神社は、宇陀の海神社(かいじんじゃ)の境外摂社で、水をつかさどる雨乞いの龍神「高龗神」(たかおかみのかみ)が祀られています。室生ダムからほどなくアクセスできる秘境です。

「高(たか)」は山峰を意味し、「龗(おかみ)」は水、雨雪をつかさどる蛇体の神のことで、記紀の神話では、「伊邪那岐命(いざなぎのみこと)」が、その子「軻遇突智(かぐつち)」を斬った時に、雷神・山神とともに出生した神です。
「闇龗(くらおかみ)」とともに祈雨・止雨の信仰を受け、水をつかさどる龍神として知られています。

深谷川に沿った深谷龍鎮渓谷の神聖な雰囲気に包まれた遊歩道を歩いたところに、鎮座しています。
江戸初期(推定)に、海神社で雨乞いの祈願をするため、龍神様の鎮まる特別な場所を探した結果、この深谷渓谷がその適地とされたようです。
龍鎮神社の一帯は、聖域と感じる空間で真夏でも少し冷やりとした空気に包まれており、滝壷には、澄み切った水が静かに深く静かに満ち溢れています。
室生では、高龗神を祀るのは室生龍穴神社が元祖と言えますが、室生龍穴神社の龍穴の龍が躍るように流れる様とは対照的で、まさに龍神様が鎮まるという呼称にふさわしい様相です。
そして、龍鎮の滝・滝壷一帯を鎮守されている龍鎮神社が鎮座しています。
現在は、室生ダムと合わせて周回道路が造られいるため、近くまで車で行くことができますが、この社が祀られたころは、ごく限られた人だけしか、来ることができない地であったのではないかと感じる秘境です。
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龍鎮神社の画像ギャラリー
撮影:2022年(令和4年) 8月
Photos by Catharsis 無断転載禁止 ©Catharsis 2021-2023
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画像ギャラリーの補足
室生ダム

室生ダム管理所の横に、駐車スペースがあり、車で来て龍鎮神社に向かう際には、ここに駐車するのがお勧めです。
ちなみに、龍鎮の神聖な水が流れ込む室生ダムの水は、奈良市や生駒市、天理市、明日香村、宇陀市などに供給されています。(私もその水を使わせていただいています。)
室生ダム周回道

室生ダムには、周回道が整備されており、このダムと周回道が造られてことで、龍神神社へのアクセスが比較的身近なものとなっています。
ダムの管理所前の駐車場から、この道を歩いて、龍鎮渓谷の入口まで容易に歩いていくことができます。
龍鎮橋

室生(むろう)ダム管理事務所前の駐車場からダムの周回道路(舗装)を約800m(15~20分ほど)歩くと、赤い欄干の龍鎮橋があります。
この橋の所から、龍鎮渓谷に入り、龍鎮神社に向かいます。
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龍鎮渓谷

龍鎮神社の一帯の「深谷龍鎮渓谷」(道標には、「竜鎮渓谷」と)は、聖域と感じる空間で真夏でも少し冷やりとした空気に包まれます。
木々と清流、苔むす岩に癒されます。ほどなく下方に小屋の屋根のような龍鎮神社の拝殿が見え、龍鎮神社に下りる参道があります。
龍鎮神社の先にも遊歩道は続いていますが、龍鎮神社の先にも遊歩道は続いていますが、2022年8月現在、ここから先は立ち入り禁止となっています。
龍鎮の滝

龍鎮神社の横に、龍鎮の滝があります。その滝壷は、龍鎮の滝の清らかな水がエメラルドグリーンに染まり深く満ちており、その奥には龍穴を思わせる二つの穴も見られる神秘的な場所です。
そして滝壷から溢れ出るように深谷川が社の前を流れていきます。 この滝壷は、龍神様が鎮まるにふさわしい神聖さを感じ、邪気を寄せ付けないパワーを感じるスポットです。
龍鎮神社

龍鎮神社は、龍神様が鎮まるにふさわしい「龍鎮の滝」の滝壺を鎮守するために祀られた社と考えられます。
現在は、室生ダムの周回路があり、近くまで車で行くことができますが、この社が祀られたころは、ごく限られた人しか、ここを訪れることがでなかったのではないかと感じます。
龍鎮神社拝殿

滝壺からあふれ出るように流れ出だす深谷川を挟んで、龍鎮神社の拝殿があります。この拝殿に入り、振り返ると正面に龍神神社という位置関係です。
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龍神神社についてもっと知る
龍鎮神社の霊水で行われた雨乞い儀式
雨乞いの儀式は、
- 龍鎮神社の滝つぼで霊水を汲み、
- 日没を待って松明を片手に古大野岳の山頂に行き、その頂にある「善女龍王」を祀る祠(場所は不明)に霊水を捧げ、
- 最後に海神社に戻って「さめ踊り」(「いさめ踊り」か?)を奉納する
というものだったそうです。
それぞれの位置関係を図にしてみましたので、ご確認ください。
現在も室生大野海神社では、慈雨のお礼に神に捧げた感謝の太鼓踊り「いさめ踊り」が行われているようで、その関係は、よくわかりませんが、受け継がれているのではないかと感じます。
海神社(かいじんじゃ)とは
上の図の通り、室生には、室生大野の海神社と、三本松の海神社の二つの海神社があります。
海のない室生村に、海の神を祭ることで、豊かな海・川・山の幸の恵みにあずかるように、海の名が付けられたともいわれています。
創建の歴史は、三本松の海神社(創建時は、善女竜王社の号)の方が古いとみられますが、龍鎮神社を境外社として鎮座させたのは、室生大野の海神社のようです。
海神社(三本松)
祈雨、止雨の霊験あつく、国家を鎮護した室生竜穴神社から、1396年(応永3年)に「善女竜王(ぜんにょりゅうおう)」を勧請したといいます。中世の初頭には社を構えていたと推定されます。
1755年(宝暦4年)の郷鑑には、「善女竜王社」とあり、棟札にも祭神は善女竜王と記されています。
しかしながら、明治初年の神仏分離令により、ご祭神を海神(わたつみのかみ)の娘である「豊玉姫命(とよたまひめのみこと)」として社号も「海神社」へと改称しているようです。
豊玉姫命は、万物の命の源である水を統御し、五穀豊穣をもたらす霊能豊かな神であらせられ、安産の神、鎮守の神としても古くから崇敬を集めています。
海神社(室生大野)
ご祭神は、三本松の海神社と同じく「豊玉姫命」が筆頭に祀られています。こちらは、豊玉姫命をはじめ6柱が祀られ、「善女竜王」も祀られています。
境内には、龍鎮神社仮宮があり、境外社として聖地、深谷龍鎮渓谷に龍鎮神社を鎮座させ、「高龗神」(たかおかみのかみ)をお祀りしています。
本殿の建立時期は、定かではないようですが、部材等から江戸時代前期頃に別棟であった一間社春日造、厚板葺の二棟が並べて建立され、その後に屋根葺材が檜皮に改められ、上方が取り換えられ、現在の三間社流造、千鳥破風付きの社殿に改造されたことが分かっているようです。
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龍鎮神社へのアクセス
アクセス
所在地:
奈良県宇陀市
最寄駅:
近鉄 室生口大野駅 (近鉄 大阪線)
徒歩:
約50分(2.7km)
または
タクシー:
約7分(下車後、徒歩 約10分)
基本情報
拝観時間:
明るい時間帯(自由散策)
※ 暗い時間帯は危険そうで、 避けるべき
拝観料:
無料(自由散策)
駐車場:
室生ダム管理所前の公衆トイレ前に
駐車スペースあり(6~7台)
※ 室生ダム駐車スペースから、龍鎮渓谷入口
まで 徒歩 約10~15分程度
※ 龍鎮渓谷入口付近に路上駐車される方も
見かけますが、道が細くおすすめできま
せん。
近隣の見どころ
室生といえば、「室生寺」があまりに有名ですが、室生寺近くにある、龍穴神社・龍穴(龍鎮神社と合わせた室生の龍神三社)もおすすめです。
また、劉鎮神社の最寄駅である室生大野口駅からは、龍鎮神社に関わる「海神社」や、岩壁に13.8mの国内で最も高い弥勒磨崖仏が線刻されている「大野寺」も合わせて参拝することができます。
(それぞれ、順次記事にしていきたいと思います。)


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