奈良八重桜は、意外に知られていませんが、奈良に咲く八重桜ではなく、「ナラノヤエザクラ」という固有種の桜です。
百人一首の和歌「いにしへの 奈良の都の 八重桜・・」で詠われた八重桜であり、現在は、奈良県の県花であり、奈良市の紋章にも使用されている奈良ゆかりの桜です。
知ると楽しい奈良八重桜
動画で解説
奈良八重桜の説明動画は、こちらから
(別ページで開きます。)
このページと、ほぼ同じ内容の特徴解説を動画でもご覧いただくことができます。
少し、紙芝居のようなドラマ仕立て感がありますが、楽しんでいただければ幸いです。
※ 「高評価」と「チャンネル登録」をいただけると嬉しいです。
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開花時期
奈良公園付近の桜の季節は、氷室神社の一番ザクラ(枝垂れ桜)が 3月中旬くらい に始まり、ソメイヨシノが咲き、続いて八重桜(楊貴妃ほか)が咲き、奈良八重桜(ナラノヤエザクラ)は、一番 遅咲きで 「4月下旬頃 ~ 5月初旬頃」が見ごろとなります。
奈良公園周辺では、約2か月 にわたり、様々な桜が楽しめます。
その中で、奈良八重桜は、一番最後に咲く桜です。
※ 開花の時期は、年によって前後します。
※2024年は、少し早めで4月中旬から開花しています。終わりも早めが予想されます。
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奈良八重桜の特徴
奈良八重桜(ナラノヤエザクラ)は、こんな花です。
「ナラヤノエザクラ」は、木そのものは小さく、葉とともに清楚な感じの花をつける種です。
世に良く知られるゴージャスな感じの八重桜とは異なり、この桜を観ようと意識しないと見落としてしまうかもしれません。
ただ、この歴史ある桜が咲く時期に観光に来られているのであれば見逃す手はありません。
ツボミは濃いピンク色で、花が開いた直後は白くなり、散る前には再びピンク色になります。
一本の木に白っぽい花と濃いピンクの花が混ざったように見えます。
繁殖力は、弱く、植え替えは難しいようです。
東大寺塔頭の「知足院」にある「ナラノヤエザクラ」の木が原木として、天然記念物に指定されています。その原木は枯死してしまいましたが、その遺伝子を受け継いだ奈良八重桜の木が再生事業により蘇っています。
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奈良八重桜に思いを馳せる
冒頭でも述べましたが、この奈良八重桜こそが、「百人一首にもある和歌で詠まれた八重桜」なのです。
百人一首 61番目 の和歌で、詠み人は 伊勢大輔(いせのたいふ)です。
この和歌にまつわる話も面白いので紹介します。
まずは、和歌から
いにしへの 奈良の都の 八重桜 けふ(きょう)九重に にほひ(におい)ぬるかな
(伊勢大輔)
11世紀前半、時は一条天皇の頃、京の都で詠われた和歌です。
文字通りに、「かつて都だった奈良の八重桜が、九重(=宮中を指す)で見事に咲き誇っていますよ」ということですが、
その意味するところは、・・・
「かつての都の奈良の栄華をしのばせる見事な八重桜ですこと。
この美しい花以上に今の帝の御世は美しく咲き誇っているようです。」
と花に託して、今の宮中の栄華ぶりをほめたたえたもののようです。
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この和歌を詠んだ時の逸話が痛快?!
※ 様々な説がありますので、一つの説として、大筋このような流れの説だとご承知ください。
2024年(令和6年)のNHK大河ドラマで描かれる時代となります。
1008年、一条天皇(第66代天皇)の中宮(第一夫人)彰子(しょうし)<藤原道長の子>が、興福寺の境内にある美しい奈良八重桜の噂を聞き、宮中の庭へ植え替えようと、根こそぎ引き抜いて荷車に乗せ運ぼうとしたところ、興福寺の僧が追って来て「命にかけてもその桜、京へは渡せぬ」と拒みました。
彰子も植え替えを断念しましたが、興福寺に伊賀、与野を寺領として与えて、そこでサクラを育てさせ、毎年、花が咲く時期に奈良八重桜を宮中に献上することになったようです。
(献上されるのは、興福寺に咲いていた、奈良八重桜の一枝という説もあるようです。)
その八重桜を受け取る役が設けられており、八重桜を受けとるときに歌を詠むという宮中の慣わしがあったようです。(定かではありません)
そして、その役は、歌が得意な女房(女官)に限られました。
この年、この花を受け取る役目は、かの「紫式部」であったようです。
ところが、紫式部は、突然、新参者の後輩女房であった「伊勢大輔(いせのたいふ)」にこの役を譲ることにします。
先輩女官が、新参者の女官に華を持たせようとしたのか、新米への試練提供(ある意味、 ” 新米いびり ” のようなもの)なのかは、定かであはありませんが・・・。
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そして、次のようなやり取りがあってのかもしれません・・
あなた、やってみたら?
(気持ちは「あんたにできる?恥をかかなきゃいいけど・・ひゃっ、ひゃっ、ひゃっ!」
なのか、「あなたの才能が、人々の目に留まるようなチャンスにして! 」なのか?)
えっー、そんな大役を新米の私なんかがぁー?
(私にだって、できますよー! ちょっと緊張するけど・・)
伊勢は、とっさに振られた中ですが、一条天皇(中宮彰子や藤原道長という話もあります)から歌を詠めと命じられます。
ちょっと君、詠んでみなさい
最高峰の才女である紫式部から譲られた伊勢は、さぞや注目されたことでしょう。そして、緊張もしたでしょう。
”ふーっ”と一息おいたかどうかは分かりませんが、そのとき詠んだのが、この歌なのです。
いにしへの ならのみやこの やへざくら
けふ ここのえに にほひぬるかな
ほう!! なんと素晴らしい!
「いにしへ」と「奈良の都」とを「けふ(きょう)=” 花を受け取った今日 ” と ” 現在の都 =京 “」、そして、「八重」を「九重(=ここ、宮中を指す)/かつ、八より上の九を使う言葉」で受けて詠んだ歌です。
あまりに見事で機知に富んだ歌であり、その場は、大絶賛だったようです。
今でも、この話と歌の意味を知ると少し涙ぐんでしまいます。
伊勢は、この歌によって 紀内侍、小式部内侍 とともに「三才女」の一人とされたようです。
こんないわれのある奈良八重桜。
観る機会があれば、是非、ご覧いただいてはいかがでしょうか。
また、この下に撮影した画像をたっぷりと掲載していますので、是非ご覧ください。
尚、紫式部の性格(これも定かでありませんが)は、自分が前に出るより、能力のある若手を・・と思ったのかもしれません。
2024年のNHK大河ドラマで描かれる紫式部、楽しみに観ていきたいと思います。
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これが、奈良八重桜! 画像ギャラリー
平安の宮中の才女たちに思いを馳せ、是非 歴史ある「奈良八重桜」をご覧ください。
撮影:2021年(令和3年)4月
Photos by Catharsis 無断転載禁止 ©Catharsis 2021-2024
植栽も進められているようですので、奈良にお越しの際は、「奈良八重桜」を見つけてみて欲しいと思います。
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奈良八重桜は、どこにあるの?
では、奈良八重桜が観られる場所を紹介します。
和歌の背景を知ったところで、この八重桜を見るとひときわ感慨深く楽しめます。
この時期観光で来られた際には、是非見て欲しいものです。
現在、奈良八重桜は以下のところで見ることができます。
他にもいくつかの場所で観らせますが、ある程度まとまって観られる場所を紹介します。
どれも小さめの樹です。(最後に、地図も置きましたので、ご参考までに)
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県庁横バスターミナル付近
2階にスターバックスがある建物前あたりに、石碑がありますので、それを目印に。(木そのものは、写真の通り小さいです。)
平安時代、中宮彰子が欲した奈良八重桜はこの辺りにあったようです。
ここで、奈良八重桜が、どのような樹なのかを確認することもできます。
登大路園地(興福寺 大湯屋付近)・興福寺
県庁側で複数本見られるおすすめポイントです。
県庁の向かいに当たる登大路園地の中にあります。写真の興福寺大湯屋の向かう遊歩道沿いで見られます。「奈良八重桜」「ナラヤエザクラ」の札が付けられていますので分かりやすいです。
この他、興福寺境内にも何本かありますので、探して(札はついていませんが)楽しんでみてはいかがでしょうか。
南大門跡の周辺、三重塔と北円堂を結ぶ道に何本かあります。
みとりい池園地
バスターミナルの交差点(県庁東)から、北に向かう県道754号に入ってすぐのところにある、「みとりい池園地」内。
何本かあります。大小ありますが、奈良八重桜の表示もあります。
写真より先に池があり、その横の信号の所に、もう少し大きな木があります。
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奈良春日野国際フォーラム 甍(いらか)庭園~茶山園地~若草山山麓
奈良八重桜鑑賞スポットとしては、一番多くみられるスポットではないかと思います。奈良公園は、広いので、奈良八重桜鑑賞目的であれば、このエリアは、特におすすめのスポットです。
奈良春日野国際フォーラム 甍(いらか)庭園(入場無料)
庭園の奈良八重桜には「奈良八重桜」の札がつけられていますので、確認しやすいです。
建物から、庭園に出てすぐの所と、奥の太鼓橋を渡った先や、小高い丘を登ったところ(あずま屋付近)に、数本あります。
桜の季節は、庭園内の桜地図が、置かれていますので、それを見るとさらに分かりやすいです。
また、庭園には、様々な草木の植栽されており、合わせて楽しめます。
茶山園地
庭園の北側に出口がありますので、そこから出ると、若草山山麓に向かう道があります。
甍の庭園の外側に沿って進むと「茶山園地」と呼ばれるところあり、ここにも複数の「奈良八重桜」が観られます。
若草山山麓
茶山園地を突き抜けるように進むと、若草山山麓(北ゲート)付近に出ます。山麓沿いに「奈良の八重桜」が観られます。
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東大寺 戒壇堂横
ここも、十数本ある おすすめポイントです。
大仏殿の西側に戒壇堂がありますが、戒壇堂の横の大仏殿側で見ることができます。
札がないため、初めてだと、どれが奈良八重桜なのかわかりにくいかもしれませんので、事前に、県庁前や甍で見ておくといいかもしれません。
この他、大仏殿寄りにも何本か見られます。
東大寺 知足院
再生原木に関心がある方には、おすすめポイント です。
(非公開ですが、金網越しに見られます。)
大仏殿から北側に少し離れた場所にあります。ここには、天然記念物「知足院ナラノヤエザクラ」が再生され、蘇ったものがあります。木自体は、1本ですが、天然記念物として見ておきたいポイントです。
少々見つけにくいですが、下の写真の右の坂道を登った先の金網の中にあります。
転害門付近
転害門から正倉院側に向かう道の正倉院側の端のあたりにあります。(奥に見える小さめの木が奈良八重桜です。)
浅茅ヶ原園地
春日大社の「一の鳥居」から参道に入ってすぐに、右方向に登る道があります。
ここを登ると浅茅ヶ原園地となりますが、登る道に何本か観ることができます。
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奈良公園周辺 奈良八重桜マップ
これらをめぐる散策を楽しんでみてはいかかでしょうか。
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ちょっと紹介です・・
奈良公園近くの奈良町(ならまち)に「春鹿」の商標を持つ酒造「今西清兵衛商店」さんがあります。
ここでは、この「奈良八重桜」の花びらから分離した清酒酵母で醸(かも)されたお酒が造られています。・・・その名も「奈良の八重桜」。
奈良女子大学・奈良県工業技術センターとの産学官共同で開発さた日本酒です。
「ワイングラスでおいしい日本酒アワード2018で『金賞受賞』」の実力通り、いい意味で日本酒らしからぬ甘酸っぱくフルーティーな味わいのお酒です。
「今西清兵衛商店」さんでは、蔵の雰囲気の中で、その時々の5種のお酒を利き酒(有料)できます。散策と合わせて訪ねてみてはいかがでしょうか。
また、「奈良の八重桜」の利き酒(有料)をしたいときは、同じく奈良町(ならまち)にある「なら泉 勇斎」さんがおすすめです。
奈良の地酒を120種以上取りそろえている利き酒&販売のお店です。
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奈良の桜の名所
全てではありませんが、春の奈良を飾る桜のスポットについて紹介していますので、こちらもご覧ください。
奈良公園近隣の宿泊施設
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社寺参拝や史跡巡りには、奈良公園周辺で宿泊し、ここを拠点に奈良の魅力を満喫してみてはいかがでしょうか。
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